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私にはない感覚

2019年12月01日

最近、社内の英語講座で「アメリカン・サイコ」という映画を観ています。パトリック・ベイトマンというサイコパスの男がさしたる理由もなく殺人を繰り返す映画で、みな結構面白がっていますが、私個人的にはあまり面白さがわかりません。実は、どうも自分には小さい頃からこういうところがあって、多くの人にはあるのに自分だけに備わっていない感覚というのがあるような気がしています。今もよくそれで人々の輪に溶け込めず、一人ポカンとしてしまうことがあります。今回はそんな例を3つほどご紹介しようと思います。

1つ目。先日、これも社内の日本語講座で、新海誠監督の「彼女と彼女の猫」というアニメーション作品をテキストの題材にしました。日本語ネイティブ社員もそうでない社員もみな何かにいたく感動している様子ですが、どうしても私にはその気持ちがわからない。1回目に読んだときは、とにかく何がなんだかさっぱり意味がわからない。それでも、日本語なので一つ一つの言葉の意味は2回読めばすべてわかるのですが、やはり何も伝わってくるものがない。ただの単語の羅列にしか思えず、作者が何を言いたいのかが掴めないのです。みなが「細かい意味とか考えなくていいんですよ。この、ポッと心が温まるようなぬくもり。素晴らしいじゃないですか。」と言うのを聞いても、ますますもってどういうことなのかがわからない。それより情景描写にいくつか矛盾点があるような気がして、むしろそちらばかりが気にかかる。1人悶え苦しむ私を見て、周囲は面白がっていましたが、私にとってはやや衝撃的でした。

2つ目。毎週通っている整体の先生がよく、おいしい店を見つけたと言っては教えてくれます。「信じられないくらいおいしいやきとんの店を見つけた」「この世のものとは思えないくらいおいしい居酒屋を見つけた」などと嬉々として語ります。何がどう美味しいのか、他の店と何が違うのかを、それは詳細に解説してくれる。「そんなにおいしいなら食べてみたいな」と思わないことはないのですが、わざわざ行くのはどうにも面倒くさい。まあ、ここまではまだ普通なのかもしれません。しかし先日ふと、「私、生まれてこのかた、信じられないほどおいしいとか、この世のものとは思えないほどおいしいとかいうものを食べたことないんですよね。」と言うと、「えっ!」と先生、一瞬言葉を失いました。「ないですか?」「ない。信じられないほどまずいものとかならたくさんあるけど、おいしいものはない。」と私。先生「うーん」と考え込み出して、この会話はこれで終了してしまいました。私もおいしいものは好きですが、なぜそこまで食べ物に夢中になれるのかがよくわからないのです。

3つ目。よく「尊敬する人は誰ですか」という質問があります。みなさん、ちゃんと答えている。身近な人から、歴史上あるいは現代の英雄、偉人などを挙げたりしています。私はと言えば「尊敬する人なんていない」が答え。もちろん、凄いと思う人や偉いと思う人は沢山います。しかし「尊敬してるか」と聞かれると、どうもすんなり「はい」とは答え難いわけです。尊敬と言う以上、もうその人を全面的に認めていないといけないのではないかと思うのですが、生身の人間となるとどうしても、私にとってそこまで絶対的な存在は心当たりがありません。それで、どうしても誰か一人挙げるとなればそれは「赤木しげる」になってしまいます。この人は実在の人物ではありません。福本伸行先生の麻雀漫画の主人公です。だから当然に非現実的です。しかし、だからこそ私にとっては完璧です。有り余る才気、何事にも動揺しない、強く、揺れない心。保身ゼロで常に前に出る姿勢。自分の命にすら無関心の潔さ。そして、こじんまりとした感傷はまったく持ち合わせていないが決して冷血な人間ではなく、どこか大きな優しさを持っている。私が理想とする人間像のすべてを兼ね備えています。だから尊敬している。ところが周囲はみな、それはNGだと言います。なぜNGなのか私にはわかりません。まあ、そうかと言って、世の赤木ファンのように赤木の墓石を削りに行ったりはしないのですが。だってこの人、実在はしないので。

このように、私の感性が世間一般的なものとギャップがあり、その結果、周囲から浮いた存在になることは昔からしばしばあります。実を言うと、自分も冒頭のベイトマンのようにサイコパスのきらいがあるのではないかと心配したことも昔はありました。けれども、とりあえずこの歳までとんでもない犯罪などは犯していないわけで、特に異常な人格というわけではないらしい。自分の独特な感性がこれから変わるとも思えませんが、きっともう大丈夫なのだろうと、最近では他人に何と言われようと気にならなくなりました。

 

代表取締役 CEO  奥野 政樹

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