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実力不足

2020年07月01日

 菅原道真公と言えば、11歳で当代随一の漢詩を詠むような平安の大天才学者です。政治家としても優れた才を発揮し、遣唐使の廃止など数々の功績を残しました。しかしながら、家柄に見合わない出世が周囲のやっかみを買い、謂れのない讒言により晩年は九州の太宰府に左遷され、不遇のうちにその人生を終えることとなります。その後、京の都で次々と起こった疫病の流行や災害が、大いなる恨みを抱きながら亡くなった道真公が怨霊と化してなしたものとされ、その鎮魂のため道真公は天神様として神格化されたのです。天神様は今も学問の神様として信仰の対象となっているのは有名な話です。

 ところが、実際の道真公はそのような大いなる恨みなど抱いてはおらず、太宰府でも自らの不遇を嘆くようなことは一切無かったそうです。それどころか、折角自分を破格に取り立ててくれた宇多天皇の信望に応えることができず、国政の役に立てないことを自らの実力の欠如と厳粛に受け止めていたとのこと。天才道真公ですらこんなに謙虚なのですから、我々のような凡人は、少々いいことがあったからと言って思い上がったりしてはいけないということなのでしょう。

 2020年も半分が終わろうとしていますが、ここまでは当社にとって例年になくアップダウンの激しい年となっています。年頭に米国INAP社の完全子会社となり、グローバルINAPグループ内での立ち位置も上がりました。心機一転、新たな気持ちでスタートし、営業成績も極めて好調、良い年になりそうな予感を感じていたものです。ところがその矢先に、米国INAP本社が日本の会社更生手続きに当たる連邦破産法第11章を適用。この知らせを聞いたときはどうなることかと大きな不安を覚えましたが、結果的には新たに有力な資本パートナーを複数社得て財務状況も見違えるほど改善し、心配とは裏腹にいいこと尽くめでした。

 これでホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、今度はCOVID-19騒ぎです。これまで積極的に参加してきた異業種交流会や名刺交換会などもまったく無くなり、やがて営業のお客様訪問もできなくなりました。社員の間でも感染の不安が高まる中、ついに原則Work from Home(WFH)という異常事態となりました。ただ、実際やってみるとこのような新しい働き方も意外に快適で、ずっとこのままでも悪くないなどと思い始めていたところに、今度は創業以来最大のデータセンター障害が起こりました。

 社員の多くが、障害が発生した深夜にオフィスやデータセンターに駆け付け、そのまま障害が収まるまでの約30時間にわたって対応に追われる中でWFHムードは一気に吹き飛び、真の緊急事態モードに突入。今もそれは続いています。当社のお客様ならびにその関係者の方々をも同様の混乱状況に置いてしまったことについては重く受け止め、誠に申し訳なく思っております。

 このような障害発生に際しては、発生原因とその責任所在の特定がなされ、その上で再発防止策を構ずることが求められます。それはもちろん大切なことですが、道真公も示す通り、結局は自らに降りかかる結果は良いことも悪いこともすべてが自らの実力がなせる業なのではないかと思うのです。今回も、緊急事態によく対応したと当社の実力を評価してくださるお客様もいらっしゃる一方で、当然のことながら厳しい叱責のお言葉をたくさんいただいています。お叱りの言葉の多くは極めて的確であり、言い訳の余地がありません。他にもっと良いやり方があったにも関わらず、今の我々の実力ではそれがやり切れなかったという悔しさが沸いてきます。

 世の中でより重要な役割を任せていただきご評価いただくには、やはり実力を上げていくより他なく、そのためにはとにかく困難から逃げずにチャレンジを続けていくしかありません。昔、オリンピックの柔道決勝戦で疑惑の残る判定で負けた日本選手が「弱いから負けた」とコメントして非難されたことがありました。グローバル・スタンダードではそのようなコメントは判定を正当化するだけであるというのがその理由です。しかし私は、やはり日本はこれでいいのだと思います。自らの実力に対する謙虚さこそが、少しずつでも実力を高めていくための絶対必要条件であると思うのです。事実、日本の柔道はその後見違えるように復活し、今また世界のトップレベルに返り咲いています。

 2020年前半は激しく揺れ動く状況に翻弄され、最終的に当社の実力不足が露呈する痛恨の結果となってしまいました。しかしそのような中でもいくつかのファインプレーはありましたし、何よりも自分たちの実力を再認識するという学びがありました。これからの後半戦、当社は自らの実力向上のためにこれまで以上に研鑽してまいります。引き続きご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願いいたします。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

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