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人的資本

2022年12月01日

今朝の日経新聞に、今後、企業は保有する人的資本の開示を求められるようになる、と書かれていました。なんじゃ、これは、ということで「人的資本」とググッてみると、「人的資本とは、“モノ・カネ”のように、“ヒト”の持つ能力を資本としてとらえた経済学の用語です。具体的には、個人が身につけている技能・技術資格・能力等のことを指し、人的資本への投資は、生産力や経済活動への貢献に繫がると定義されます。」なのだそうです。

今更ながら、世の中は人材の大切さに気が付いたのだそうで、そうであれば、今までは一体何だったのでしょうか。「企業は人なり」などと建前では言っていても、実は、企業というものは誰がやっても大差ない、というのが世の偽らざる本音だったということなのでしょうか?更に最近は、優秀な人材を確保し雇用を維持することをEngagementなどという英語で呼ぶのが流行りのようです。つまり優秀な人材を辞めさせない。そのために優秀な社員の昇進を早めたり、豪華な社員食堂を無料にしたり、リモートワークを基本にしたりするのが人的資本経営のマニュアルになっているようです。更には人事DXとやらで、優秀な社員の特性をAIで分析し、その特性に合わせて組織にEngageする施策を構築するサービスもあるとのこと。

一体、ここでいう「優秀な人材」とはどういう人材なのでしょうか。上記の定義を見ると、「身についている技能、技術資格、能力等」が高い人材ということになるように思えますが、この「能力等」には何が含まれるのでしょう?組織に貢献できる人間の必須条件である「対人能力」はちゃんと含まれているのでしょうか?どんなに高いスキルやノウハウを持っている人材でも、対人スキルが伴っていなければ、それらの資質を組織のために生かすことは不可能です。資格にいたっては、対人能力とはまったく無関係なペーパーテストで取得できるものが殆どであり、資格取得者はそこで得た知識を、どうしても人的要素を抜きにして人が織りなす現実に適用しようとしてしまい、とてつもなく非現実的な解を導き出したり、立ち往生してしまうケースが多い。それでも資格を保持しているが故に要らないプライドがついてしまい、ボロを出したくないものだから業務から逃げがちで、結局組織に害を与える人材になるリスクが非常に高くなる。人的資本経営では、もしこうした資格の取得を会社がサポートすることが良しとされるのであれば、全くの本末転倒ではないでしょうか。

そもそも、Engagementといいますが、対人能力の高い優秀な人材を会社に引き留めておくのに、給与条件や福利厚生がそれほどに重要なのでしょうか。対人能力が高い人材が最も喜ぶことは何か。それは「対人」ができることなのです。周囲と自己の個性を引き出し合い、お互いに刺激し合いながら、一つのものを作り上げていく、あるいは、目標を達成していく。そこに存在するリーダーシップと協働がもたらす日常的ドキドキ感。これこそを、優秀な人材は何より欲するのです。

つまり、優秀な人材をキープしたいなら、このような対人が織りなすドキドキ感に溢れた職場環境を実現することこそが最も効果的なのではないかと、私は思うのです。そのときに一番大事なもの、それはAIで個々の持つ技能を測定することでも、AIに自らに適した業務を探してもらうことでもありません。ドキドキ感に必要なことはその対極にあること。周囲に自分の魅力を伝える表現力と、周囲の魅力に鋭く反応する感性なのです。これは、理屈の領域ではなく芸術の領域に関わること。私にとっての人的資本経営、それは、Artistic経営であると言えましょう。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

 

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