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AIの教養と知性

2023年03月01日

 最近、AIの権威失墜が止まらない。まあ、そんなことを言っているのは私くらいかもしれませんが。

 まず、囲碁でAIがイギリスのアマチュアに15戦して、1勝14敗という大敗北を喫したとのこと。最近、NHK杯囲碁のテレビ放送でもしたり顔で出しゃばってきて、大波のように揺れる形勢判断を繰り返し、私のような弱小の視聴者を大層惑わせ続けているAI君。これで少しは大きな顔をできなくなるのではないかと、大いに留飲を下げています。まったく、ダイレクト3三なるこれまでは非常識とされた手を打って勝ちまくり、調子に乗っていたが、どうやら自分の石を包み込まれるように打たれると突然大混乱をきたすようで、ちょっと可愛いくもありますね。

 次に、翻訳ソフトのDW君。翻訳ではなく、より正確・自然な文章提案に特化したAIだなどと自画自賛しているので、次の翻訳をやらせてみた。

「同じ街に住むブラジル人を横目に、ポルトガル語では無く英語を全市の小学校で教える、という『国際理解教育』を私は信じません」  鳥飼玖美子

 これは何かといいますと、毎週行われる米国本社との経営会議資料の表紙に私が載せている、日本の名言の一つです。DW君の翻訳はこうです。

[I don’t agree with “education for international understanding” by teaching English instead of Portuguese in all the city’s primary schools, while ignoring the Brazilians there. ]

 ???この翻訳の、どこが正確で自然なのでしょう?この場合、agreeなどという動詞を使いますか?believe inとかtrustでしょう。それにこのby teaching English instead of Portuguese という言い方ですが、文法的には必ずしも間違えではないかもしれないものの、この言い方だと、byはまずagreeにかかるように見える。なぜなら、byの前で一呼吸入れないとこの長いフレーズは人間には読めない。つまり自然ではないのです。「英語ではなくポルトガル語を使い同意する。」まったくもって意味不明です。

 そして決定的におかしいのは、while ignoring the Brazilians there.のthereです。これは、どう見ても小学校を指しているようにしか読めません。つまり原文と意味が違う。全然、正確ではないのです。これでは使えません。

 そして最後に、最近世の中をにぎわしているCG君。なんでも、喋りがこれまたとても自然なのだそうで、これを友達だと公言する人間も増えているとのこと。更に、文書作成能力が優れていて、そこらの大学生よりも優秀なレポートを書くのだそうです。私も、「インフレの原因と対策」について語らせるデモを見ました。確かに、中央銀行の金融政策から世界情勢の不安、更には気候変動に至るまで、網羅的にペラペラと述べていました。ただ、どうも表面的な知識の羅列ばかりで伝わるものがない。確かに、デキの悪い大学生のコピペレポートによく似ている。そこに、自らの強い主張や思いというものがまるで見えないのです。こういうタイプの人と働いたら、多分、オプションばかり示して自分では何も決めない、やらないんだろうなあと、少々不愉快な気分になってきました。そこで、少しトレーニングを施そうと、またまた日本の名言をぶつけてみました。

 CG君、赤塚不二夫の「ただバカっつったって、ホントのバカじゃダメなんだからな。知性とパイオニア精神にあふれたバカになんなきゃいけないの。」はどういう意味?

CG君回答:この文章の意味は、ただ単にバカに見えているだけではだめで、本当に才能のあるバカになることが大切であるということを表しています。知性と先駆者の精神が豊かなバカになることが求められています。」

 意味不明。。。単語を置き換えただけです。自分の価値観に対する矜持と挑戦の大切さが、まるで伝わってきません。

 じゃあさ、アカギの「死ねば助かるのに」は?

CG君回答:「死ねば助かる」という言葉の意味は、特定の人が死ぬことで問題が解決するという意味です。このような言葉は不適切なものであり、人生を貴重にすべきであるという考えに反するものです。

 げ、説教されちゃった。なんでも知っているような顔をして、「死中に活を見出す」も知らないのか。まあ、大体、知性も教養も小学低学年レベルというところでしょうか。

 しかし、AI君達は、毎日ちゃんと日経新聞を読んでいるだろうに、どうしてこんなにデキが悪いのでしょうか。と言うのも、当社ではデキるビジネスパーソンになるために毎日日経新聞を読むことを奨励しています。別に私は日経新聞のまわしものではなく、逆に言いたいこともたくさんあります。特に当社の連敗が続く日経社歌コンテストの審査と、言葉先行のDX押しなどは納得がいきません。とは言うものの、まあ、やはりビジネスパーソンたるもの、日経新聞を読むのは基本中の基本です。当社には日本語が母国語でない社員も多いのでハードルが高いことは分かっていますが、幕末に伊藤博文や井上薫らの“長州ファイブ”だって、イギリスに送り込まれて毎日タイムズ紙を辞書と首ったけで格闘していたようですし、かく言う私だって、若かりし頃、ろくに英語もできないのに米国に送られて、毎日ニューヨーク・タイムズをコンサイス英和辞典を片手に読んでいました。あと、新聞はデジタル版はだめです。紙でなければいけないのです。紙の新聞を一通りめくりながら、興味のある記事を取捨選択し、濃淡をつけて読む。こうすることで、本当の意味での情報が体に染み込み、また情報の取捨選択能力も上がるのです。

 と、ここで気が付きました。そうか、AI君達は紙の新聞が読めないんだ。やはりデジタル版はだめなのですね。それに日経デジタル版は有料だから実はそれも読めないのでしょう。AIはお金を持っていない、というのは大きなハンディキャップなのですね。小学校低学年なのだと思えば、可愛いところがあるような気もします。イライラしないで気長に付き合っていきましょう。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

 

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