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サイコーに気分がいい散財

2023年06月01日


 長年に渡り当社に多大なる貢献をしてくれた社員が退職するということになり、送別会をしてあげないといけないなあ、と思いました。というのも、当社ではもう何年も送別会というものをやっていなかったからです。中小企業というのは社員間の人間関係というのが良い意味でも悪い意味でも濃いですから、大企業の予定調和的異動や退職と違い、そこから社員が去るということの背景には綺麗ごとでは片付けられない恩讐も絡みがちです。そのような状況下で送別会を開くと、往々にして荒れて問題が発生することが多くなるのでいつしかそういったものをやらなくなっていました。ただ、今回は、ここまで当社を核として支えてきた大功労者ですし、特段の怨念を抱いての退職というわけでもないようなので、久しぶりに送別会を開くべきであろうと思った次第です。

 とはいうものの急だったこともあり、本人も何かと忙しいようで開催日はゴールデンウィークの中日となってしまったため、参加者は本人と幹事と私の3人だけということになってしまいました。また、私という人間が食通とは対極に位置する食音痴であることは衆目の知るところであり、こういうときに店選びをさせてもらえることはまずありません。今回も、私が保有する株の優待券がある六本木一丁目のインドネシア料理店を提案したのですが、幹事によりあっさり却下され、代わりに3つのオプションが提示されました。私としては「であればどれでもいいよ」で、日本橋の土佐料理に決まったのですが、そのときに幹事がふと、「本当はもっと行きたいとこあるんだけど、一人2万円はするのでだめなんですよねえ。」と呟いたのです。その時はなんとも思わなかったのですが、時間を置くと段々効いてきました。最上のものがあるのに、その下で手を打つということに納得がいかなくなってきたのです。翌日幹事に「やっぱり、その一人2万円にしようよ。お金なら心配しなくていいから」と申し出ましたが、「もう土佐料理を予約してしまったし、2万円はイタリアンだから太りますよ」とちょっと気になる説得をされ諦めざるを得ませんでした。なんか急に、土佐のカツオってどんな魚だっけと気になって検索しましたが、変哲のない魚でスター性に欠けるような気がして、どことなく中途半端な気持ちで本番に臨むこととなりました。

 会は始まり楽しく話をしましたが、いつものごとく、会が楽しければ楽しいほど私は何を食べたのかは全く覚えていません。覚えていることといえば、 事前に勉強しておいた土佐の栗焼酎というのを何杯か飲んだということだけです。味はよくわかりませんでした。そんな中、幹事が「例の2万円は、あそこの中に入ってるんですよね」と窓越しに通り向かいの米国系高級ホテルを指さしました。そうすると主賓が「あー、あそこ、前、何人かで昼行きましたね」と予想外の発言をし、それで、私も実はその何人かに含まれていたことを思い出しました。それを聞いた幹事は、あまりの散財を自粛していた謙虚さが吹き飛び、「ずるい」と叫んで少々場は気まずくなり、当然の成り行きのごとく二次会は通りを渡ってそのホテルへと向かったのです。

 とはいっても、今晩は今更イタリアンという気分でもないので、バーへと行ってちょっと高級感でも味わいましょうということになりました。人気のないホテルの中を上がったり下がったりとしばし迷った後にようやくたどり着いたバーの中は真っ暗で、福本漫画に出てきそうな黒服の若い男が我々を案内してくれました。通された席は大きなグランドピアノの横で少々話すのには適しておらず、階段を上がったところの景色のよさそうな席がいくらでも空いているのにそこに通されたことに主賓と幹事のお二人はやや不満げでしたが、まあ我らの出で立ちからするとそれも仕方のないこと。黒服にメニューを差し出されたものの、私は目が悪くただでさえ小さい字は見えないのに、真っ暗の中では何も見えません。「おすすめは何ですか?」と聞くと、 「今、日本ウィスキーの特集をやっています。」と一枚別立ての高級そうなメニューを渡されました。相変わらず全く見えないので、まあ、なんでもいいやと思い、右下のものを指さしながら、「私は、これを、ロックで。」とお願いしました。すると黒服が「このお値段ですがいいですか?」とのこと。そう言われても見えないので幹事に見てもらうと「6万7千円。。。」だと。一瞬、 うっとなり、「グラス一杯で6万7千円」と復唱してしまいました。どことなく黒服の「バー カ、お前みたいな田舎者が飲むもんじゃねえんだよ」という心の声が聞こえた気がしました。

 幹事が「少し考えますから」と黒服を返し、主賓とともになにやら楽しげにカクテルのメニューを見だし、ほどなくして注文するものを決めて、私にも良さげなものを解説を加えながら推薦しだしました。しかし、私としてはどうも、あの黒服になめられたままで飲みたく もない甘ーいカクテルなどで妥協をしてこの先、本当に後悔は残らないのかという強い強迫観念が湧いてきます。もともとイタリアンで6万円+を使うつもりだったのです。意を決して、「いいよ、僕はやっぱり6万7千円 でいく」と宣言して黒服を再度呼びました。主賓と幹事の心配そうではありながら呆れ果てたようなため息を横に聞きつつ黒服に、「やっぱり、私は、これをロックで。」とオーダー。黒服はかなり驚いた様子で少々声を上ずらせながら、「響の30年をロックですね。」と聞き返してきました。「そうなの。まあ、なんでもいい。6万7千円のね。」「かしこまりました。」というような短い会話とともに黒服は去っていきました。バーの向こう側で何やら仲間の黒服2号と話している様子が見えます。どうせ、「あのおっさん、マジかよ、かっこつけちゃって。ほんとに金払えるのかね。」とでも言っているのでしょう。いい気味だ、という清々しい気持ちが沸き上がってきました。

 モノが運ばれてくると、しばし、3人で匂いを嗅いだり、写真を撮ったりしていましたが、飲み始めてしまうとあっという間。話すことに夢中でやっぱり味など全く分かりませんでした。「おかわり」と言おうとするとそれは幹事と主賓に腕づくで「もう、やめろ」と止められ、オーダーは強制的に甘いカクテルにすり替えられました。

 1時間ほどでしめて10万円+だかを支払い撤退。いつになく爽快な気分でした。散財というのはこんなに楽しいものなのかと、ゴールデンウィーク後半に向けての精気がみなぎってくる思いでした。

 連休明け、幹事に「お疲れさんでした」というと、「あれ、自分が飲んじゃうんじゃなくて主賓に御馳走しないといけなかったんじゃないですか?」とのこと。でも、違うんだな。主賓は、「あれは、大変よい思い出になりました。ありがとうございます。」と言っていたんだね。結局、プライスというのは物の値段じゃないんですね。大事なのは記憶と感動なのです。もっとも、記憶に残り感動を呼べる演出にふさわしい馬鹿が飲む。これこそが正しいお金の使い方なのです。

 

代表取締役 CEO 奥野 政樹

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