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2014年、魅せる感性 インターナップ・ジャパン!

2014年01月01日

新年、明けましておめでとうございます。

 もう随分前のことになりますが、養老孟司さんの「バカの壁」という本がベストセラーになりました。その本の中で養老さんは、現代の「左脳偏重主義」、「こうすればああなる」的思考の横行に警鐘を鳴らされていました。正直、あの頃の私には養老さんの言われるところはよくわかりませんでした。やはり物事、基本的には筋道立てて論理的に考えないと何かとおかしなことになってしまうのではないかと思っていたということです。しかしその後色々なことを経験していくうちに、最近ようやく、論理偏重のバカバカしさに私も気が付いてきました。論理は隙なく組み立てれば、随分ともっともらしくはなりますが、現実は常に論理とはまったく違う次元で動いています。そういえば映画スター・ウォーズで、フォースの達人ヨーダも似たようなことを言っていました。そのような折、総務担当から「そろそろ、来年のテーマを決めてください。」と依頼がありました。


当社では、毎年年末に翌年のテーマを私が決め、それを盛り込んだ年賀状を作成していますが、私が美術の方はさっぱりなものですから、例年、社員の中から腕に覚えのある人がデザインや絵を担当してくれています。「今年のデザインはコンペにするんですから、早くお題を出してくださいよ。」とのことでした。
 論理はダメで、理屈もダメで、じゃ何なんだっけ?感覚だよなあ。こう、一発でビシッと決めるような、研ぎ澄まされた感性。そういうもので格好良く行きたいよね。ゴチャゴチャ言ってないでさ。このようなことを自問自答しているうちに「魅せる感性」という言葉が浮かんできました。なかなかに字面も気品があるし、音の響きとしても気持ちが良い。いいんじゃない。数年前の「絵になる真面目さ」以来の傑作だなと、自ら悦に入りながら、全社に披露しました。普通は、社長がこう言っているのですからこれでテーマは決まり、社員一同、真摯にこれに合うデザインを作ることに邁進する、こうなるはずです。
 ところがどうしたことか、私の言うことを全然気にも留めず、変な提案が続々と出てきます。「MIROよ、頑張れ!」何ですか、これはただの宣伝じゃないですか。「右脳だ、フォースだ、インターナップ・ジャパン!」そのままパクリで気品も何もあったものではありません。「ホップ、ステップ、インターナップ・ジャパン」リズムはよいのですが、もっと深いところをえぐりたいんですよね。とにかく続々と出てくるものですから、一つずつモグラ叩きのようにハッキリと駄目出しをし、「だからもう決めたんだってば」と宣言するのですが、提案の嵐は一向に収まる気配がありません。今時は何でも、「褒めて、おだてて、その気にさせて」がマネージメントの基本なのに、これだけ「駄目だ」と言われてよくめげないよな、と当社の社員の打たれ強さに改めて感心しました。


「とにかく、もう時間がないから絵を描いてよ、絵ね」ということで周知したところ、これが、最近は筆で描けなくてもパソコンでデザインができるもので、またまた次から次へと出てきます。しかも、各人自分のものこそが最高であると信じて疑いません。積極的に取り組んでくれるのはありがたいのですが、問題はみんな自分の好きな絵を描いているのであり、お題である「魅せる感性」をまったく考慮に入れていないということです。総務担当に至っては、「CEOが余計な口出ししないでください。コンペがフェアにできないじゃないですか」などと言ってきました。私の意向を無視して、多数決でデザインを決めるなど絶対にあってはならないことです。
 こちらも各人にストレートに駄目出しを続け、自分の描きたいものを描くのではなく、私の意向に合うものを描くように指示を出し続けましたが、なかなか聞いてもらえないので、遂に「魅せる感性」のガイドラインを示すことにしました。

 1 どこまでも奥を深く見据える妥協のない凄み
 2 一瞬で真実を見切る氷点下の怜悧
 3 常識に震えない傲慢な狂気


これが、更に皆のやる気に火をつけたようで、社内いたるところでデザイン合戦が繰り広げられるようになりましたが、どうも私のイメージにピタっと合うものはなかなか出ません。実はかなり近いものをこっそりと見せてくれた社員もいるのですが、公にして色々言われたくはないのか、出品はしてくれません。結局、NOCのメンバーが手描きしてくれた馬の絵に、眼の涼しさなど、私が相当に注文をつけて直してもらい、背景は技術部長に作ってもらいました。 最後に毛筆で字を入れようということになると、どこからともなく続々と社員が筆と墨の周りに集まってきて、頼まれてもいないのに何やら勝手に書いています。結局数人の書を繋ぎあわせて、ようやく年賀状は完成しました。


201403
今回の一連の年賀状作りを通じて、つくづく、当社にはまだ「魅せる感性」は早いのかもしれないと思いました。囲碁の故藤沢秀行名誉棋聖は「異常感覚」でならした人ですが、その秀行先生が生前、「囲碁の神様が囲碁を100知っているとしたら、自分がわかっているのは5か6くらい」と言っていました。それを言ったら、我々はまだビジネスの1か2をわかっているかどうかというレベルでしょう。感性で勝負できるレベルにはとても達していないのかもしれません。それでもこれだけ騒げばさすがに、社員各自の胸に少なくとも「魅せる感性」という言葉は刻み込まれたと信じて、この一年また精進をしていきたいところです。

本年もご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


代表執行役CEO  奥野 政樹

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