当ウェブサイトは安全と利便性向上のためにクッキー(Cookies)を使用しています。詳細はこちら

法人向けクラウド・ネットワークサービスのPacketFabric

安心が欲しくて不安が募る4つの方法

2014年04月01日

誰かがラジオで言っていましたが、人間の感情の中で最も質が悪いのは「不安」なのだそうです。確かに人間不安に駆られ、或いは付け込まれて、信じられないくらいおかしなことをしてしまいます。しかも、不安は放っておけば増殖をします。不安を上手くコントロールして、むしろ突破へのエネルギーに変えていく、口で言うのは簡単ですが、そうそうできるものではありません。どうしても早く安心したいともがいてしまいますが、その結果かえって不安は募るものです。
 仕事の世界にも不安は満ち溢れています。そして、その対処を間違えて押し潰されて壊れてしまう人も残念ながら多い。そうならないためには、逆説的ですが、仕事における不安に対する間違えた対処法を一度整理しておくというのも必要ではないでしょうか。


【1】知識へ逃げろ

 仕事における不安。その根源をなすのは、自分の位置づけがわからないということです。端的に言えば、自分は仕事における偏差値がいくつであり、世の中からどの程度大事にされるべき存在であるのかがわからない。だから、もしかしたら自分は、世の中からとんでもなく粗末に扱われてしまうのではないかという不安が生まれます。
 これが、偏差値がないなら作ればいいじゃないかという発想を生むわけです。まず、仕事を知識という定量化可能なもので定義しなおし、その習得量のレベル、つまり偏差値が高いものほど大切にされるという仮想現実を構築し、そこに逃げ込みます。最近は、色々な資格や規格を作って逃げ場をたくさん用意してくれる“親切”な団体もありますから、仮想現実の構築は比較的容易にできるわけです。
 しかし残念ながら、仕事というのは偏差値で数値化できるようなデジタルな要素は極めて少なく、殆どは感覚の世界、これが現実なのです。一生懸命に現実から逃避しようとしても、現実からの声は聞こえてしまいます。「あの人、色々知ってはいるけどね~。」…この「~」の後は、直接は聞こえてきませんが、想像するだけで不安は元の2倍に増幅します。


【2】知らない奴らは貶めろ

 こうなるともう、何としても偏差値こそが仕事の本質だということを世の中に知らしめる必要がでてきます。ただ、知識を増やすにも限界があります。そこで、知識量の少ない人達を攻撃し貶める言動に出ることで、相対的に自分の価値を高め、安心を確保しようとする。「こんなことも知らないの?常識でしょ。」「もっと勉強しろよ!」当然、周囲の人は去っていきます。その刹那、どうしてもよぎる新たな不安。「まわりに誰もいなくなったけど、本当に自分はレベルが高いのだろうか?」…不安は元の4倍に増幅します。


【3】現実に巻き込まれそうになったら専門用語を使え

 空気を読めない人というのはどこにでもいるもので、知識原理的仮想現実に生きている人に対して「ねえ、プロなんでしょ。これ、困っているから解決してよ。」などという、無意味な依頼をしてしまう人も中にはいます。このような無神経な人達により現実に引き戻されるということは、仮想現実に生きる人には最も避けたい状況です。現実では自分が役に立たないことがバレてしまうということもありますが、それ以前に、自分が役に立たないはずはないのであり、この現実は自己矛盾というハイレベルの不安を誘発するからです。迫ってきた現実を押し返す、その為に培ってきた専門用語を使います。相手はどうせわからないわけですから、細かいところで間違えていてもどうでもよい。とにかく専門用語を羅列して煙に巻く。確かに、どんなに空気の読めない人でも煙は見えますから逃げていきますが、逃げ際の「さっぱり役に立たん」という顔つき、これが不安を増幅し、元の8倍のレベルになります。


【4】オカルトで脅せ

 こういう窮地に突然陥ることのないように、やはり日頃から、現実に対する防衛線を張っておかなければいけません。仕事なんかしたらとんでもないことになるぞ。情報漏洩とか、損害賠償とか、みんな知識ないから知らないだろうけど、怖いお化けや妖怪が続々と出てくるんだ。だから色々やっちゃいけないんだ。大事なことは、お化けや妖怪が出ないように知識を深めることだ。こういうご主張になるわけですが、ここまでくると、知識原理主義者であり有害であるとして、世の中もオカルトとの闘いに動き出すことが多く、それを感じれば益々不安は増幅し、なんと元の16倍になります。
 ただ、オカルトというのは意外に人の心に響くものでもあり、反対に組織がオカルトに乗っ取られてしまう場合もあるので要注意でしょう。


index2

 以上、安心が欲しくて不安が募る方法4つ。何がまずいかというと、まず不安を全否定しようとしていることでしょう。世の中に不安要因は必ず存在するのです。これが動かせない事実であり、不安のない仮想現実を構築しても、不安は無くなりません。そして、この4つの方法はどれも独りよがりで、他を受け付けていません。自分は他より優れているので、その分安心する権利があるという、他との比較の上に成り立つ我儘な発想からスタートしています。だから気が付くと孤立無援になってしまい、より不安になるのです。
 不安というのは、一人ではなく集団で対処していくものでしょう。そのためにお互いの強みを活かしあう。反対に言えば、自分の弱みも周囲にわかっておいてもらわなければいけない。結局、不安に対処する最も効果的な方法は、偽りのない自分をいつも堂々とさらけ出すということではないでしょうか。


代表執行役CEO  奥野 政樹

ページトップ戻る