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今時の青少年教育事情

2014年07月01日

「中2病」という言葉があります。ウイキペディアによると、「本人が自己設定した(外部から見れば 片腹痛いような)奇異なキャラクターを周囲に押し付けるような振る舞い」であり、特徴としては以下に なるようです。

1.洋楽を聴き始める。
2.旨くもないコーヒーを飲み始める。
3.売れたバンドを「売れる前から知っている」とムキになる。
4.やればできると思っている。
5.母親に対して激昂して「プライバシーを尊重してくれ」などと言い出す。
6.社会の勉強をある程度して、歴史に詳しくなると「アメリカって汚いよな」と急に言い出す。


これは今に始まったことではなく、病気と言うより、通常の成長過程にある中2男子の特徴であるように私には思えます。仲間内でキャラを競い合う。大人や女子から見ると、馬鹿げていてポイントがつかめない。場合によっては気色の悪さすら感じる。そういうキャラをムキになって身にまとおうとする。それまでの、周囲に完全に依存した存在であった自分を抜け出して自我を確立したいのだが、はて、力のない自分がどう自我を確立したらいいのかわからない。だから、自我の対象をどうにか探す行為がこれです。これを抑圧してはいけません。大人は往々にして、自我を勉強かスポーツか、そうでなくてももっと「意味のある」なにかで確立することを押し付けがちですが、そんなあてがわれた素材では、自我は確立するどころかしぼんでいくだけです。くだらないことでもいいから、自分で自我の素材を探す試行錯誤こそが重要なのです。この過程を経ないで大人になると、くらげのように自分に責任の持てない男に成り下がります。


あるコミュニティー紙に、中2病に関連して面白い記事が載っていました。中2男子の1人が、どこからか毛染めのスプレーを仕入れてきました。なぜ毛染めなのかはまったくわからないのですが、早速同級生男子5人が放課後公園に集合、キャラの立て合いが始まります。1人がまず正当に、髪の毛をちょっと染めてみる。そうすると別の子が、「おっ、俺なんかこうだぜ。」と今度は眉毛。続いて脛毛。こうなると、最後はもう「あそこ」の毛を染めないとどうにもキャラが立たなくなってしまいます。最後の1人が、「じゃ俺、行ってきます。」と勢いよく宣言してトイレに直行。5分ほどで戻ってきて、証拠を見せたのかどうかまでは記事に書いてありませんでしたが、とにかく、お互いに自分がどれくらい「突き抜けているか」のプレゼン合戦になったのでしょう。

 事はこれで終わりのはずでした。ところがどうにも、髪の毛を染めたのが狙っていたのとは別の意味で抜けていました。学校には髪の毛を染めてはいけないという校則があり、翌日、髪の毛が一部染まっている生徒が、先生から事情聴取を受けることになってしまいます。もちろん仲間を売るようなことはできませんから、必死で単独犯を主張しましたが、先生もプロ、辻褄の合わない供述を突き詰められて、保護者にも通知され、結局5人とも御用ということになりました。


5人の生徒達は2つのクラスに所属が分かれていたようですが、担任の先生は2人とも女性のベテランで、指導にあたっては、「男」の問題に対応すべく20歳代前半の男性体育教師も引っ張り出されたようです。記事にそれぞれの先生の指導の言葉が書いてありましたが、これがかなり面白い。まず体育の先生。「今回のことは、みんなでやったのが悪い。1人で堂々とできないのは勇気のないやり方だ。こういうことを今やっていると、大人になって集団で殺人でもなんでもやってしまうようになるんだ。」いやいや先生、みんなでやっているからフツウなんですよ。1人だとちょっとアブナイかも。それに大人になったら殺人って、どうしてそうなっちゃうの?次に担任の先生。「4人は変な毛は染めなかったかもしれない。でも止めないで見ていたのだから共犯、同罪です。」えっ、校則違反は髪の毛染めですよね。それに他の4人も、別に1人のせいにしようとは更々思っていないわけで、そこに論点はないような??そして最後にもう一人の担任の先生。変な毛を染めた生徒の担任だそうです。「こんなことはこの中学校始まって以来の、前代未聞の出来事です。情けなくて涙が出ます。もう、今日からあなた達は変質者5人組です。」…この学校は創立100年を超えているそうです。

 先生たちの困惑ぶりがよく表れていますが、結局のところ、この件は何が悪いのか説明できていません。生徒達は「涙が出る」と決め台詞を言われても、「なんで?俺たちなんにも悪いことしてないよ。」という純粋な疑問がわいてくるだけで、心には刺さらなかったことでしょう。記事の最後にも、生徒達は先生から「変質者5人組」という素晴らしいニックネームを頂戴した、今回はビシッと決まったと自信を深めたようだ、と書いてありました。

 私が思いますに、この件について生徒達に言うべきことはただ一つ。「下品なことはするな。」それ以上でも、それ以下でもないでしょう。それでも、下品なことはまたやるのでしょう。でもそれでいいのです。「下品なことはしてはいけない。」と今聞かせておけば、大人になってからその意味がわかります。


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最近、世の中がなんでも意味を求めるようになり、意味のない中2病的な言動を抑圧する傾向が強すぎる気がします。その結果、男子の成長機会は縮小し、いい年をして、一流大学の学生集団が裸でジェットコースターに乗り、「男気」などという幼稚な言動をするようになっています。子供のうちは勉強に意味を見出せと強制され、自我を表現する術や手段を会得する試みは否定されてきたのでしょう。大人になってからくだらないことで自我を表現しても、もう笑えません。今度は、それこそ先生方がおっしゃる通り逮捕です。

 やはり、中2病と病気扱いしているのがよくないのではないでしょうか。これからは「中2チャレンジ」と呼ぶことにするのはどうでしょう。


代表執行役CEO  奥野 政樹

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