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プロの条件 

2015年09月01日

世間ではよく「プロ意識を持って仕事をしろ」とか、「それは、ちょっとプロ意識が欠けているんじゃないか」などと言われますが、ではプロ意識って何ですかと問われると、意外にはっきりしないというケースは多いものです。だから言われる方はどうしていいのか具体的にはわからないのですが、言っている方はプロという言葉の持つ気品と厳格な響きに酔っているので、自分は疑いようのない本質をついている感覚に襲われてしまうわけです。実は、お前のやっていることはどうも俺は気に入らんねえ、甘いんだよ、という主観の吐露以外の何物でもないのですが。


プロとアマの違い。これはある程度明確で、プロというのは対象となる営みをすることで、お金を稼いでいる人のことです。それで生計を立てていれば、よりプロ性が高まるでしょう。一方アマというのは、お金にもならないのになぜか、対象となる営みを自らの時間と労力をかけてやることです。多くの場合、それは楽しみのため、つまり趣味として行われるわけですが、例えば家事などのように、自らや家族の生活を維持するためといった必要性に迫られてという場合もありますし、あるいはボランティア活動のように、何らかの義務または責任の意識から行われることもあります。


実は、アマだからプロより真剣でなくてよいというものではありません。まぁ、趣味であれば自分の加減で適当にやっていればいいのでしょうが、家事やボランティアとなれば周囲にも影響を及ぼしますから、やる以上はそれはそれで真剣に取り組まなければいけないというのが筋なわけです。では、プロはアマとどこが違うのか。それは、プロというのは自分の仕事にお金を払ってくれる人の期待に応えなければいけない、つまり自分を買ってくれる人の評価を常に意識していなければ成り立たない、ということになると私は思います。つまりプロ意識とは、常に自分にお金が落ちる仕組みを意識し、その仕組みの中で、自分にお金が落ちることに影響力を与える人間あるいは集団の期待に応えるために、その評価を常に意識すること。私はそう捉えています。
 
 この仕組みや、影響力を持つ人や手段の特定、その期待と評価の把握は、プロスポーツの世界などではさほど難しいことではありません。仕組み自体が相当に単純明白ですし、評価も大部分は数値化され客観的に行うことができます。これが芸能やアートの世界になると、やや宗教的な要素がからんできますが、それでもまだ、評価は数値による客観化が相当部分可能です。従って、この世界で生計を立てる人たちは、もちろん厳しい側面はあるのでしょうが、プロ意識を持つという点では、さほど難しくはないはずです。


これがビジネスの世界、特に雇われの身のサラリーパーソンとなると話が大分違います。自分は一体、どういう仕組みの中で、誰に、どういう風に評価されているのかということは極めてわかりにくいわけです。わかりにくいから、そういうことを把握するのをついつい諦めてしまう。あるいは上司の付ける評点とか、あるいは売上げ数値といったようなわかりやすいものにすがりつきたくなる。最近ではそういう弱い気持ちに寄り添うかのように、客観的数値目標の設定とその達成度に基づく評価制度といった安易なものに、この世界の本質から外れているためにおよそ機能しないシステムが幅を利かせたりもしています。
 
 こういう複雑な状況の中で持つべきプロ意識とは、具体的にはどういうことなのか。私はまず、この仕組みの中では自分の言動、一挙一動が、瞬間瞬間で、周り中の人々から採点されているという意識が必要だと思います。しかも恐ろしいのは、その採点基準は一人一人バラバラであり、主観の塊であり、すべてに応えようとしても無理である、つまりどこかで評価者の期待を自分で取捨選択していく必要があるのです。まずは、自分の生きている世界がこのように危険な世界であるという認識を持つことが、ビジネスの世界でのプロの基本でしょう。


そしてそのような危うい世界の中で、我々は確かに評価され、採点され、その点数は常に変動し、それは回りまわって自らの稼ぎに反映しているのですから、この点数を確実に把握していこうという意識、これがプロ意識の2つ目の要素になります。常に自分は今何点かなというのを把握し、点を取るための言動を積み上げ、万が一失点してしまったら、すぐに取り返さなければいけません。得点を挙げようとする意識が希薄な分には周囲はまだ寛容ですが、減点に気が付かず放置しておくようだと、周囲は容赦なく再減点を繰り返していきますから、あっという間にプロとして崩壊してしまいます。
 
 そして、評価システムが不明確で複雑系のこの世界で、自分の得点を常に正確に把握していくためには、自分の中に自分を客観的に見つめて評価するもう一人の自分を作り、その評価に真摯に耳を傾けること、これがプロ意識の3つ目です。客観的な自己評価というのは、実は意外にわかりやすいし、しかも往々にして正しいものです。難しいのはむしろ、それに対して真摯に向き合うことの方です。それがどうにも怖くて自己の正当化に努め、自分は正しい、凄いと思おうとするのはナルシスト。逆に、何でも自分が悪いと思うことで納得しようとするのはただの手抜きであり、およそプロ意識があるとは言えない。私は、そういうことだと考えています。

代表執行役CEO  奥野 政樹

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