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法人向けクラウド・ネットワークサービスのPacketFabric

トリプル・トリニティ論

2017年12月13日

久しぶりのブログ執筆である。私は技術部のくせに精神論ばかりを打つので、社内もこれにはやや食傷気味で、暫し鳴りを潜めていたのであるが、何、じっと機会を狙っていたのである。

さて、2017年12月に当社は、新ブランド「トリプル・トリニティ」をローンチした。ブランドの誕生ストーリーは以下の通りである。
https://www.packetfabric.co.jp/solution/detail11_tts.html

トリプル・トリニティという新ブランドの元に、国際ビジネスのスピードを加速させる言語仲介サービスを提供する体ではあるが、永らく現場を担当している一成員としては、トリプル・トリニティは一商品などでは、決してない。そんな、一つの枠に収まる類のものではない。それはインターナップ・ジャパンの根底を脈々と流れる、共通な何か、である。

共通な思想、ではない。そんな頭の中だけの情報空間に収まるシロモノではない。共通な文化。違う。海を渡ってきた多数の、キャラクターの濃いメンバーの文化はばらばらで、むしろ収集がつかぬ位だ。古事記を原文で読むポルトガル出身スタッフがいるくらいだ。私など伊弉諾尊と伊邪那美命が木の周りを回るところで早々にギブアップした。では、メンバーを共通項でくくるもの、ならどうか。いや、やはりおかしい。動物園の檻を全部取り払って、皆がのそのそ出てきて一つの広場に集まったようなNOC(ネットワーク・オペレーション・センター)である。共通項などでくくれるはずがない。

だが、それは確かに存在し、我々をつないでいるのだ。あたかも地の底を流れる溶岩のようである。触ると火傷を負うくらい、熱いものだ。それが、トリプル・トリニティなのだ。

かく言う私も、実は、今回トリプル・トリニティと銘打ってみて改めてその存在を認識した次第である。自分がどっぷり浸っている環境、文化、系、システムのことは、自分自身では却ってよく分からないものだ。金魚鉢の中の金魚は、自分が金魚鉢の中にいることが分からないのに似ている。だが「トリプル・トリニティ」などとにわかに横文字で言われてみると、うむ、悪くはない。かっこいい響きだ。これは、モテるかもしれない。永らく現場の一担当であった私にも、スポットライトが当たるチャンスが巡って来たのではないか。こうしてはおれぬ、INAP Agileクラウドの検証など後回しだ、ええい!とばかりにOpenStack Horizonからログアウトし、頼まれもてもいないのに独り奮い立って筆を執った次第である。

そこで、トリプル・トリニティのイメージをつかんでいただくために、もう少し現場の目線から説明を加えようと思う。もって我が社の新ブランド理解の一助にしていただけたら幸いである。

■ネットワークセキュリティ会社の翻訳に見るトリプル・トリニティの例
DDoS攻撃も問い合わせもなく、平和なある日の午後のこと。一通の翻訳依頼が舞い込んだ。
「指示の通り手順を実施したら、ウェブアクセスが不可となりました。至急切り戻し手順をご教示ください。」
これは影響大だ!こんな翻訳依頼を受け取ったら、NOCルームの緊迫感は一気に上り詰める。
そして、「お世話になっております、お問い合わせを受け付けました、云々…」なんて悠長な紋切り型な挨拶はせず、ぶっきらぼうに一言、

「至急対応いたします」

とだけ返信した。と同時に、両手は英訳に着手していた。1分30秒で翻訳を完了した。

=====
Urgent request from ABC company.

We have performed the procedure, but the https page has been inaccessible since 13:00 JST.
Please provide the procedure to revert back ASAP.
=====

いつも通りの何気ない対応だったが、立ち止まってトリプル・トリニティ的な分析を与えてみよう。

分析: 守破離
かく言うインターナップにも、社内フローやマニュアルは、存在する。NOC業務に就いて日が浅いメンバーを守るためだ。しかし、それらは死守するために存在するのでは、決してない。次第に、状況を自分で判断し、対応してもらうように育って欲しい。要は、いつまでも決まったフローにしがみついておらず、今のフローが現状に合わないのであれば、改善要望をあげてもよし、本例のように定型文をぶっちぎって時間を優先してもよし。トリプル・トリニティは、「守破離」なのだ。

■オランダの某お客様に見るトリプル・トリニティの例
“The serverxxx is down. We can tell that the CPU #1 is displaying an error through iDRAC. Would you check for us?”
「サーバxxxがダウンしている。iDRACでCPU #1が異常を示しているのは分かるのだが。様子を見てくれないか。」という依頼内容である。

ここで、このオランダのお客様はリモートハンズの前に、100台近い彼らのDellサーバのCPUを、アップグレードしている。高スペックのCPUに載せ替えているのだ。新作ゲームのリリースに先立ってのことだ。実はこの作業にお客様自身が一週間ほど日本に滞在した際、しゃぶしゃぶディナーにご招待差し上げた。その時に彼らの作業内容を把握していたのだ。

であれば、そのサーバだけCPUのグリス塗りが甘かったのではないか。ラックのどこかにCPUグリスも保存してあったな。なければ、ジャンクオタクの技術部長が持っているはずだ。頭ではそんな考えを巡らしつつ、体は現地に向かう。

サーバの筐体を開けてみると、なんのことはない該当CPUのネジを締め忘れていただけだ。さすがに100台のCPUを交換するのは、大変だったのであろう。最後のサーバで、力尽きたのかもしれない。しゃぶしゃぶディナーを目前にして、緊張の糸が緩んだのかもしれない。念のためグリスを塗り直し、CPUをきっちりネジ止めして無事復旧した。

さて、本ケースに、トリプル・トリニティ的な分析を与えてみよう。

分析1: マニュアルは何のために
普通のリモートハンズと言えば、厳密な手順書を提出するよう、ユーザに依頼することであろう。オペレータが判断しなくとも済むよう、厳密な手順を提出させることであろう。

海外のユーザは、そんな文化は理解できない。インターナップは、よほど変化球的なハードウェアを使っているのではないかぎり、そのような手順書をユーザに要求することはない。これがトリプル・トリニティの「スピード」と「柔軟性」にあたる部分であろうか。依頼する方は、厳密な手順書を作るのだけで、半日かかるだろう。そんな非生産的な時間はスキップいただいて、メール一本送ってもらう。分からなければ現地から連絡すればよい。

非効率な例は、こうだ。
「リモートハンズをお願いします。液晶モニターとキーボードを準備する。LCDとキーボードをサーバにつなぎ、該当サーバの電源を入れる。『Press F12 to boot into BIOS』が表示されたらF12キーを押し…(中略)BIOS画面が表示されたら『Management』画面で、Hard DiskのSATA0が認識されているか確認する…云々」

トリプル・トリニティなら、こうだ。
“Boot into BIOS and check whether SATA0 is recognized.”
の一文である。
しかも(どうせOSが起動していないのだから)、SATAディスクのケーブル抜き差しもやっちゃうだろう。その上でSATAディスクが認識する・しないの結果を報告するであろう。

勿論、中には、厳密なマニュアルを送ってくれるお客様もいらっしゃる。それこそ、ファイバーケーブルに貼るラベルの文字フォントサイズからきっちりと指定してくる。グローバルに標準化が行き届いているユーザだ。

こういったユーザの場合、臨機応変、よろしくやってくれるのが要望ではない。厳密に、頼んだタスクだけを、このユーザはイギリスのお客様だが、本国の彼らに代わってやって欲しいのである。
そんな時、我々は、インストラクションを忠実に守る作業者に徹する。「起動しないんで、勝手に筐体開けてやっちゃいましたぁ」なんて報告はせぬ。いちいち作業結果を報告し、指示を仰ぐのだ。
要は、ユーザが真にどうして欲しいのか。温度感も含め、臨機応変に対応せよ、ということだ。

分析2: 対応内容の広さ
そもそも、CPUをユーザ責任でリプレースしている。この時点でDellの正式サポートは受けられないだろう。

普通のデータセンタであれば、「CPUのグリスを塗り直す作業はリモートハンズで対応し兼ねます。お使いのベンダーに依頼してください」とお断りすることであろう。
するとユーザは、一台のサーバのために来日することは難しかろうから、やはりリモートハンズで、例えばこんな作業を依頼する羽目に陥るであろう。

サーバをラックから外し、梱包して、本国に送り返し、修理したらまた送り返すので、データセンタに届いたらラックマウントして…げえっ!!考えただけで、反吐が出る!!
インターナップであれば、このような気の遠くなるような作業工数を省くことができるのだ。

トリプル・トリニティの精神は、まだ続く。

例のしゃぶしゃぶディナーの時だ。交換したCPUが100個もあるけど。ジャンク屋で引き取ってくれないかしら、という話になった。酔った勢いもあり、その場で了解、インターナップのオフィスはアキバに近いんで、探してみるよ、という運びになった。さすがに型落ちした100個のCPUの引き取り手は見つからなかったが、こんな変化球的な依頼もありなのだ。オランダの一ユーザが、アキバの電気屋街をうろうろ当たって回るなど、考えられない。観光客にしか見えない。とにかく、インターナップが間に入れば、こんな依頼だって可能になるのだ。

■アジア系のお客様に見るトリプル・トリニティの例
ユーザのサーバのラックマウントをして、初回電源投入時のこと。RAIDコントローラのバッテリー消耗のため、BIOS画面で警告を発してユーザの入力待ちになった。この時は、

「RAIDコントローラのバッテリー消耗のエラーで止まってるよ、いちいちBIOS画面で立ち止まらない設定にしちゃうね」

と状況を連絡した上で、全サーバの設定を変更してあげた。

こんな何気ない一コマなのであるが、トリプル・トリニティが十分に発揮されている。

そもそも、RAIDコントローラの警告で停止していることさえ、標準的なリモートハンズでは気づかないだろう。この時は初回起動時だったので、頼まれずともモニターを接続して、起動シーケンスを眺めていたのだ。何故なら、海外から輸送してきているので、高い割合でハードディスクが故障していることを経験で知っていたからだ。これだけで、次回再起動時にBIOSシーケンスでひっかかり、リモートハンズを依頼する時間が省かれている。

行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。今年もNOCメンバーの幾名かが巣立ち、新しいブレインを迎え入れた。しかし、インターナップという川はもとのまま、変わらない。トリプル・トリニティの精神のためだ。我が社のNOCのメンバーは様々な国から来て、様々なバックグラウンドを持ち、百花繚乱の相を呈しているが、根底を流れるトリプル・トリニティの精神は、一つなのだ。いかがだったろう。またしても精神論に終始する結果となったが、皆さんにトリプル・トリニティを少しでも理解いただけたなら、幸いである。

技術部 間庭

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