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法人向けクラウド・ネットワークサービスのUnitas Global

エッジコンピューティング v.s. クラウドコンピューティング ~鍵を握るのはネットワークエッジ~

2022年06月30日

1.時代はクラウドコンピューティング。でもエッジコンピューティングも活躍。

今さらではあるが、エッジコンピューティングという言葉はIoTの登場に合わせて頻繁に使われるようになった。もともと日本語で「ふち」や「端」と訳される「エッジ(edge)」、ネットワーク分野においてはユーザ環境が外部に繋がる直前の「境」という意味で使われる。つまり、エッジコンピューティングとはネットワーク上の(つまりはクラウド上の)コンピュータリソースではなく、ユーザ環境内の端末においてデータを処理することで、処理速度の向上やクラウドアクセスに伴うネットワーク負荷を軽減しようという考え方である。
大量のIoT端末から絶え間なく生み出される膨大なデータを瞬時に処理し、速やかにアプリケーションを制御する必要性から、改めてエッジコンピューティングがもてはやされることになったのだ。確かに、いくらクラウドサービスが普及して高速な処理をさせるクラウドコンピューティングが容易に利用できるようになったとは言え、車の自動運転をつかさどる車載コンピュータを全てクラウドに移したいと思う人はまだいないだろう。

(自立走行車にはパソコン数百台分の計算能力に相当する大量のコンピュータが搭載されている。
このため、走るデータセンタと呼ばれることがある。)

ただ、エッジコンピューティングは何も医療機器、産業機器、自動車といったIoT端末に限ったものではなく、オフィスのサーバルームに置かれているファイルサーバ、データセンタに設置している自前のWEBサーバもエッジコンピューティングと言える。そしてこれらの多くは自動運転ほどの処理性能が求められないことから、利便性が高く効率的に利用できるクラウドコンピューティングへの移行が進んでいるのは周知の通りだ。

 

2.高度なクラウド利用がもたらす新たな課題

しかし、それだけでは終わらない。ビジネスの世界では用途や重要性に応じて複数のクラウドを使い分けるマルチクラウド、エッジコンピューティングと併用するハイブリッドクラウド、更には世界中のユーザに快適にサービスを提供するために海外クラウドを利用する例が増えている。そして、このようにクラウド利用が高度化かつ複雑化する中で、新たな課題が出てきている。
その1つが、インターネット上にある複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)にいかにして安全、快適、効率的にアクセスするかだ。ユーザ側はそれぞれに対してインターネットVPNを組んだり、専用回線を敷設する必要が出てくる。また複数のクラウド拠点がある場合にはそれらの接続も考慮しなければならない。インターネットVPNであれば比較的容易に構築できるが、通信品質が安定しにくい。一方で専用線はコストが高くサービスも硬直的である。国際間となるとこの両方がさらに難題となる。これではクラウドコンピューティングのメリットを享受しづらいのではないか。

 

3.ネットワークエッジの台頭、その始まりは?

そこでここ数年急速に台頭してきているのが新たな「エッジ」、ネットワークエッジである。単にユーザ環境とクラウド間の境界としての「エッジ」ではなく、ネットワークエッジはクラウドやISPをはじめとするインターネット上の様々なサービスプロバイダに直結するためのコネクションサービスだ。
ユーザは一旦ネットワークエッジにさえ繋がれば、インターネットを経由することなく、その先で待ち構えている各種サービスに容易にリーチできるのだから利便性は高い。更にネットワークエッジと各プロバイダ間は広帯域、低遅延のバックボーンで構成されているので、接続性は快適だ。

このように、ネットワークエッジはより高度なクラウドコンピューティングを容易に実現する手段として広まりつつあるが、実はその構想は今に始まったものではない。クラウドサービスがまだ世に広まっていない2000年代から、サービスを提供する側とそれを利用するユーザ側を直接接続する「Donut Peering/ドーナッツ・ピアリング」を唱え続けているのが、Unitas Global の創業者兼CTOであるGrant Kirkwood氏だ。コンテンツを有する側とアクセスする側に存在する数々のプロバイダをリング状につなぎ合わせることにより、中心でHUBの役割を果たしている大手プロバイダ(Tier1プロバイダ)を迂回して通信することができるようになる。その構成がちょうどリングドーナッツのような形状となるから「Donut Peering/ドーナッツ・ピアリング」なのだ。

 

4.Tier1プロバイダを迂回する意義とは?

そもそもTier1プロバイダを迂回する意義は何なのか?を理解するために、Tier1プロバイダについて少し触れることとする。
Tier1プロバイダとは、そのネットワークの規模により決まるものと考えられがちで、確かにごく一部の巨大な通信事業者がTier1の座に君臨している。ただ、それより重要な特徴は、Tier1プロバイダ同士は相互接続している上、お互いを行き来する通信に関しては課金しないと協定している点だ。つまり、Tier1(A)とTier1(B)はお互いにどれだけ通信を流しても通信料がかからないのである。これだけ聞くと一見メリットと思うかもしれないが、これは同時に2つのことを意味する。
1つ目はコストに関して。Tier1同士の通信は無料である。それではTier1はその巨大なネットワークを維持し続けるための費用をどこから得ているかと言うと、Tier1が構成するHUBにアクセスするためにクラウド事業者や中小ISPが支払う接続料金である。そしてそれは最終的にはそのクラウドの利用者、またはISPの契約者が負担することになる。クラウドサービスの利用者が悩まされる「アウトバウンド課金」(クラウドサーバからインターネットに向けて転送されるデータ量に応じて課される従量制の通信費用)が、まさにこれである。
2つ目は通信品質に関して。Tier1同士の通信は無料であるため、Tier1同士でトラフィックを流す方が経済的に合理的であると考えられる。その結果、必ずしも最も通信品質の良い経路を選んでデータが届けられるとは限らないことになる。国内の通信なのに、一旦海を渡って戻って来るなんていうこともあり、通信品質の低下を招く恐れがある。また、無料である故、相手先のネットワーク内で通信品質の劣化が発生した場合でも改善要求がしにくく、問題の解消に時間を要することがある。
以上のことから、Tier1プロバイダを迂回して通信することは接続料・通信料を抑えられる点と、通信品質を確保する点においてメリットとなる。

 

5.まだまだ進化するネットワークエッジ

ネットワーク分野においてネットワークエッジの歴史は浅く、まだまだ技術的にもサービス的にも発展の余地は大きい。今後は、コネクションサービスとしていつでも確実に高速でつながる安定性はもとより、マルチクラウドや海外クラウド利用を強力にサポートするためには、グローバル規模で接続できるプロバイダ、そしてユーザ拠点の拡大が期待される。そして何よりも、日々複雑化するネットワークを専門的な知識が無くても誰でも簡単に利用できる仕組みが求められるが、そこで鍵となるのがSoftware-Defined Network (SDN)技術の活用だ。
SDNの活用により、物理的なネットワーク上に仮想的なネットワークをいくつも作り出すことができるため、必要な時に必要な通信先と必要なだけの容量の通信環境を設定することが可能となる。そして、こうした技術を駆使してセキュアな通信環境をServiceとして提供するNaaS(Network as a Service)が広まることで、ユーザの運用負担は大幅に下がり、通信コストの軽減にもつながる。
究極的には、ユーザがエッジを介して通信しているのか、オープンなインターネット上で通信しているのかを意識すること無く、常に最適な通信環境が自動的に確保されているのが理想だ。

こうして技術面とサービス面で進化が進めば、いつの間にか自動運転もクラウドコンピューティングで制御されている日も来るかもしれない。鍵を握るのは“ネットワークエッジ”だ。

 

Vice President
事業戦略 / セールス&マーケティング
中村 慎輔

 

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